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【人事による例文あり】「職場における私の役割と課題」の昇格試験論文

昇格試験の小論文試験にて頻出テーマである「職場における私の役割と課題」について、模範回答例とその解説をする。

大手企業の人事担当で、昇格試験の設計や小論文の評価を実施している私が、多くの方から質問を受けるのが

「職場における私の役割と課題」で何を書いたらいいのか?

確かに難しいテーマだが、考え方をインプットすれば、さほど大きな問題にはならない。

昇格試験で論文試験を控える人は、ぜひ参考にして欲しい。

このブログの運営者情報。①大手企業の人事課長 ②昇進試験の制度設計・面接官担当 ③会社にも認定される昇格試験オタク
何でもご相談ください!
目次

1.「職場における私の役割と課題」の論文回答例について考える

昇格試験の論文試験にて、以下の課題テーマが与えられた設定とする。

昇進論文考査

  • 対象:課長職
  • 課題テーマ:「職場における私の役割と課題」
  • 文字数:1,500字以内

2.「職場における私の役割と課題」の論文テンプレートメモ例

このような感じでまずは論文テンプレートメモを作成する。

自分がわかる形でよいが、与えられたテーマに沿って簡易にまとめること。

(テンプレートメモ例)

1.私の役割と課題

(1) 役割

 ①部門目標の達成 ②部下の育成

(2) 課題(役割から落とし込む)

 ①目標の部門内共有 ②その部下に適した指導

2.  その理由

(1) 役割:課長の日常の役割を書き出す

 ・・・二つの大きな役割に収斂

(2) 課題:課題とは役割遂行のためのタスク/ミッション

 ・・・課題と問題の違いに言及

3.  効果の具体例や期待例

(1)部門目標の達成と目標の部門内共有

 ・・・連帯感の醸造とかシナジー効果

(2)部下育成とその部下に適した指導

 ・・・経験の浅い人、経験豊富な人  

4. まとめ

以上から、決意表明

このテンプレートメモ作成における留意点は、「(2) 論文テンプレート・メモ作成の留意点」で後述する。

3.「職場における私の役割と課題」の論文回答例文

1. 私の役割と課題

職場における私の役割と課題は、次のとおりだと考える。

まず、役割として「部門目標の達成」「部下の育成」を、そしてこの役割から落とし込むべき課題として「目標の部門内共有」「その部下に適した指導」を挙げたい。

2.  その理由

(1) 役割とは地位や職務に応じて、完遂すべき役目のことである。当社の課長職の役割は実に多岐に渡る。これを列挙すると、概ね次のとおりである。

・経営者や上司との連携

・社内外関係者との調整

・目標の設定と落とし込み

・業務指示と進捗管理

・業務改善

・部下指導

・リスクマネジメント 等

ここで、これらの役割が一体何のために必要なのかを思考する。

企業は常に成長を目指さなければ存続できない。そしてその原動力は高い目標を掲げ、これを確実に達成していくことに他ならない。会社の目標は各部門に展開され、全部門が漏れなく目標を達成することで完結するものである。

さらに目標を達成するのはヒトの力であり、その人財の成長次第でより高い目標が達成されるかどうかが左右される。

このように考えると、先に挙げた課長職の役割はどれも目標達成に必須のプロセスである。そしてこれらの役割を極限まで煮詰めてみると、私の果たすべきは「部門目標の達成」と「部下の育成」という二つの大きな役割に収斂すると考えた次第である。

(2) では、課題はどうであろうか。課題とは役割を完遂するために解決すべき、もしくは対処が必要なタスクのことである。現実とあるべき姿の差異が「問題」だとしたら、課題はこの差異を埋めようとする具体的なミッションだといえる。

私は私の役割として「部門目標の達成」を挙げ、この役割から落とし込まれる課題を「目標の部門内共有」だとした。いうまでもなく、部門の目標はひとりの力で達成できるものではない。全員がベクトルを合わせ、協力があってこそ成しうることである。そのためには、目標を部門内で共有することが最も重要だと考えたからである。

また、「部下の育成」という役割については、その部下の長短をよく把握している私が、画一的な指導ばかりでなく、各々の部下の能力に応じた指導を行うことが重要かつ効果的だと捉えた。そこで「その部下に適した指導」を私の課題として挙げたのである。

3. 期待される効果の例

私は私の二つの役割を認識し、それぞれの課題を完遂することで次のような効果があると考えている。

(1) 部門目標の達成と目標の部門内共有

個々の目標達成への想いを部門メンバー間で共有し、全員で喜び合う風土が醸造される。連帯感が高まると、互いの業務やその進捗にも関心を持つようになり、アドバイスや情報交換が活発になるなど、相乗効果が期待できる。こうした部門全体で力を合わせるという好循環が、より高い目標を目指しこれを達成することを可能とさせるのである。

(2) 部下の育成とその部下に適した指導

 部下の個性や能力・スキルに応じた個別指導の成果は、即効性は期待できないかもしれない。特に経験の浅い部下はなおさらである。しかし、これを諦めず繰り返すことで、部下は小さくとも必ず成功体験を味わうだろう。この体験を積み重ねさせることが部下育成のキモであり、それが必ず部門目標達成に貢献すると期待できる。また、その一方で経験豊富な部下には、より高度な目標と課題を与え、自主性を発揮させるよう促すことでさらに成長につながる効果が期待できると考える。

4. まとめ(決意)

以上のとおり、私の職場における役割と課題について述べた。これらの役割を日頃からよく認識しその課題を完遂することで成果を挙げ、リスペクトされる課長職になりたいと思う。

― 以上 ―
(1,497字)

3.「職場における私の役割と課題」の論文回答例文の解説

「職場における私の役割と課題」は、特に中間管理職の昇進試験では、頻出で常連といえる課題テーマ。

抽象的でやや手ごわいテーマだが、対策次第で十分合格点はもらえるテーマである。

以下に私の見解を交えながら、テーマやテンプレート・メモそして回答例文を解説していきたい。

(1) 論文テーマの吟味

まず、これは課長職への昇進試験である。テーマにある「私」とは「現在の私」ではなく近い将来の「課長職の私」である。従って、現在の私の役割と課題について記述すると、間違いなく減点どころか即不合格である。ここは目指す課長職になりきって、その視点に立ってテーマを吟味する必要がある。

テーマは「職場における私の役割と課題(1,500字以内)」とシンプルで論文記述上の細かな指示もデータも示されず、実にそっけない。だからといって、課長職の一般的な役割と課題を羅列しただけでは不合格である。私の役割と課題をしっかり認識したうえで、なぜそうなのか、そして、何をどのように、どうしたいのかに論を展開しないと、出題者の期待や質問に応えたことにならない。

さらに、このテーマで留意したいのは、「役割」と「課題」というワードである。これらの意味をきちんと押さえておかないと、このテーマに対する論文は成立しない。  

課題テーマに頻出のキーワードを30個ほどまとめたが興味ある人いるだろうか?

このなかに、これら二つのワードも含まれている。昇進を目指す以上、これらのワードの意味や使い方はぜひ習得しておくべき。

徳丸 博史
徳丸 博史

定義の理解がズレていると、前提がズレるので評価者に理解できない論文になります。定義をしっかり理解しましょう

(2) 論文テンプレート・メモ作成の留意点

論文テンプレート・メモ作成のコツは、冒頭に例示したように大見出し、小見出しを概ね決めてしまうことだ。そこに自分の想い、使いたいワードなどを簡単にメモしておけばよい。

論文テンプレート・メモは、論を展開していくうえでの羅針盤だ。これに沿って書き進めれば、自分の論旨が違う方向へ流れてしまうことはない。また、言うまでもなく、テンプレート・メモ作成の段階では、後に述べる文章構成をどうするかを予め決めておくことが必須である。

なお、論文テンプレート・メモ作成に多くの時間を費やせない。課題テーマを読んだら、テンプレート・メモが瞬時に頭のなかにイメージできるようにしておくこと。なお、1,500字以内の論文だと60分の制限時間が一般的で、テンプレート・メモ作成時間は最初の5分以内が目安と考えておけばよい。

(3) 論文回答例文の文章構成とその内容

回答例文の文章校正

回答文例は「双括構成」で記述されている。

徳丸 博史
徳丸 博史

双括構成は昇格試験の小論文におすすめなテンプレート

  • まず、テーマに対する結論を最初に置き、
  • 次にその結論に至った理由を述べ、
  • 具体例や事実を示したうえで、
  • 最後に簡単なまとめを記述して締める

とい文章展開方法である。

論文全体として、

  • 結論:10%
  • 理由:40%
  • 具体例・事実:40%
  • まとめ:10%

くらいの構成にすると、記述しやすくかつ読みやすいとされている。

回答例文の内容

では、回答文例をみてみる。

最初の結論の項で、テーマに問われている「私の役割と課題」に簡潔明瞭に応えている。

この時、先に解説したとおり役割と課題を混同し、それぞれを曖昧に捉えてはいけない。なぜなら、出題者の意図は、役割と課題というワードをあえて使い分け、受験者がこれらにどんな問題意識をもっているのか知りたいからである。

回答文例では、役割から具体的に課題を落とし込む、という両者を主と従に関係づけた論理立てにしている。これは論文書き出しの出発方法として評価できる。

次にその結論に至った理由の説明である。

回答文例は、役割とは何かを定義したうえで、課長職の日常の雑多な役割を列挙し、これを集約すると「私の役割は大きく二つになる」ことが理由だとしている。

また、同様に課題とは何かを定義し、役割を完遂するために必要な課題は何かと考えると、結論の項で示したそれぞれの課題が最も重要であることを理由としている。

役割と課題を切り分けたうえで、結論に至った理由が簡潔に述べられていて論理の展開に工夫がみられる。

三つめは、期待される効果の例である。

効果例としては特段目新しいものはない。しかしここでは夢のような効果や奇をてらう例は、昇進の論文試験では控えた方が無難である。効果は強く喧伝したいところだが、そのことで却って論文全体が軽薄な印象になりがちである。課題を完遂することで、十分手の届く効果範囲にとどめておくことが賢明である。

この項は役割から落とし込んだ課題の効果例が、要領よくまとめられている点が評価できる。

最後にまとめの項である。

まとめの項とはいえ、くどくどと冒頭の結論を繰り返すと双括構成の効果が薄れ却って逆効果である。ここは回答文例のとおりで十分である。

なお、昇進試験である以上、簡単に決意表明をしておくと文末を締め易くなるばかりか、受験者の人間性が垣間見え読み手に好印象を与える。

(4) 全体の具体性はどうか

論文のキモは自分の主張や考えを、証拠をもって読み手に分かってもらうこと、説得することにある。従って内容が具体的でないと、読み手は頭のなかに受験者の主張や考えがイメージできない。

ところで、具体的とは徒に細かいことを記述せよ、ということではない。テーマの問いに対して、自分の考えを分かり易い表現で簡潔にまとめ、読み手に「なるほど」と思わせる内容こそが具体的に記述されているといえるのだ。

そんな視点で回答例文を再読してほしい。結論・理由・効果の例そしてまとめを通じて「具体化の工夫」が随所にみられ、十分合格点がもらえる回答になる。

(5) 補足のポイント

小論文作成のポイントである「数字の活用」と「論文の書き出し」について解説する。

数字の活用

今回の回答文例には数字の記載は使用していない。あえて使用していないのだが、その理由は別記事で解説する。

数字を使う戦略もある。

論文の字数制限が許せば、課題実施前後の目標達成率の比較予想や、部下の個別指導後のスキルマップの期待上昇度などを数値で示すと、さらにリアルな論文になるだろう。

論文の書き出し

論文の最初のフレーズは、結論を先に置く双括構成で記述する限り、おのずと決まってくるのであまり悩むことはない。回答文例を参考にしてほしい。

書き出しのコツは、以下の記事で解説している。

まとめ

本記事では、昇格試験論文で頻出テーマである「職場における私の役割と課題」について、回答の例文を示して解説した。

難しいテーマではあるが対策すれば、合格点に達するのはそれほどハードルが高いものではない。

詳しい論文の書き方については、以下のガイドで解説している。

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徳丸 博史
人事担当・課長
現在は人事担当で課長職。
昇格試験の面接官を担当し、年間60名程の面接を実施。
初めての昇格試験時、周りからのプレッシャーと対策の仕方がわからなすぎて焦りから鬱病に。
一度不合格になったが、翌年に再受験で合格。
昇格試験で辛い想いをしている人を救うべく、不透明な昇格面接の対策法を発信する。
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