【人事が解説】昇格試験論文のサンプル例文・書き出し方・評価基準(字数1200字前後)
- 小論文を課されたがどのように書けばいいのかわからない
- 今回の試験で絶対に受かっておきたい
- なるべく時間をかけずに済ませたい
- 学生の頃に論文書いたけど、社会人の論文ってどう書くの?
この記事では、上記のような悩みを持っている方に向けて、小論文の書き方や書き出しのコツ、サンプル例文を解説する。
私は大手企業の人事部門で、この論文試験のテーマ選定や評価基準の策定に長くかかわってきた。
その知見を活かして解説するので、小論文に悩んでいる方の助けになれば嬉しい。
この記事の最後に無料プレゼントがあるので、ぜひ最後まで読んで欲しい。
1. 昇格試験における小論文試験とは?社会人の論文?
まずは昇格試験における小論文試験の概要について説明する。
社会人の論文とはどういうものなのか
(1) 昇格試験の種類
昇進・昇格試験に論文試験を採用する企業は多い。
昇進・昇格試験といえば、受験者を多様な角度から観察し、次のようなデータや様々な試験結果を総合的に評価して、昇進・昇格者を決定するのが一般的だ。
昇格試験の主な種類は以下の通り。
- 人事考課結果
- 技能/実技試験
- 筆記試験(論文試験を含む)
- 適性試験
- プレゼンテーション試験
- 面接試験
(2) 小論文試験を採用している企業の割合
上記のうち、小論文を含む筆記試験は、従業員1,000人以上の大企業のうち81%が採用している(「労政時報」第4036号(2022.6.10)より)
昇進・昇格の判定にあたって、多くの企業が「文章を書くこと」に重きを置いていることがわかる。
2. 昇格試験の小論文試験の評価基準:何が評価されるか?
論文の記述内容からは、受験者の様々な能力を推し量ることができる。
人事担当は、論文から受験者の次の三つの能力のレベルを評価しているので各項目を解説する。
(1) 問題を把握する力
昇進・昇格試験の論文試験は、学校時代の自由作文と違って必ず論文テーマが設定される。
例えば「あなたの職場を明るくするための施策を述べよ」というテーマが出題されたとする。
問題を把握する力のない受験者は
- 「元気な挨拶を励行する」
- 「風通しの良い職場造りをする」
- 「飲み会を多く開催し、コミュニケーションを円滑にする」
といった「施策」を延々と記述する。
このパターンの記述は非常に多い
こうした記述は0点ではないが、出題者が真に確認したい内容ではなく、加点は難しい。
なぜならば、昇進・昇格して上位の役職者になると、日々様々な問題と向き合わなければならない。
問題が存在するとき、まずやるべきことは、
- 現状確認し、
- 原因分析し、
- あるべき姿を想い描き
その後、はじめて施策を立案し実行するのが役職者の重要な役割である。
出題者にとって、施策の良し悪しはどうでもよい。
人事は、上記のとおり、受験者が施策立案に至るまでのプロセスや、その考え方を確認したいのだ。
このように論文を記述させることで、受験者の問題を把握する力(問題意識といってもよい)が推し量ることができる。
(2) 論理を構築する力
論文試験で分かることの二つめは、「論理を構築する力」である。
よく「あの人の話は分かり易い」とか「この文章は説得力がある」とか言われる。
それはなぜかといえば、その話や文章が筋道を立てきちんと整理されているからだ。
反対に、
論理を構築する力が弱い人は、頭の整理がつかないまま・思いつくまま書き進めるため、結局何を伝えたいのか、あるいは言いたいのか、読み手にとって意味不明な文章になりがちである。
企業の役職者は日常的に上司・部下・他部門の関係者そして社外の利害関係者と適切にコミュニケーションをとらなければならない。
また、相手を説得しなければならない場面も多くなる。
自分だけわかればいいのは、個人のメモや日記だけです
重要なことは、情報や考え方を相手に正しく分かってもらうこと。
そのために論理を構築する力は、優秀な役職者になるためには必須の能力だといえる。
以上のように論文を記述させることによって、人事担当は受験者の論理構築力のレベルを確認している。
(3) 自ら考え抜く力
「文章が上手な人が優秀な課長になれるのか?」
答えは「ノー」だ。企業の昇進・昇格にかかる論文試験は、文章の上手さを評価するものではない。
重要なのは、設定されたテーマに沿って頭の中で問題を十分把握し、諸事象を整理し筋道を立てて記述すること。
すなわち、問題の把握、論理の構築について、如何に自ら考え抜いたかを読み手にアピールすることが重要なのである。
書く力は、考える力だ。
その論文がよく書けているかどうかの評価のポイントは、設問テーマに対してよく考え抜いた内容か、そしてそれを自分の言葉で表現できているかどうかである。
この具体的な方法はまたどこかで解説する。
人のモノ真似や想いつきでない自ら考え抜いた論文は、おのずと読み手の心を惹きつけるもの。
この「自ら考え抜く力」が役職者に求められる大切な資質のひとつであり、小論文で試される三つめの能力である。
3. 昇格試験の小論文試験の形式と頻出テーマ
本項では小論文試験の試験形式と頻出テーマについて解説する。
自分の企業の試験要領を確認しておくこと
(1) 小論文試験の形式
3パターンあるので解説する。
①集合型試験
受験者全員を一堂に集め、論文試験を一斉に実施するやり方である。古い体質の企業が多く採用している。
試験時間は60分から90分、字数は800字から多くて3,000字程度というのが一般的である。
小論文のテーマはその場で示されるケースがほとんどだが、近年は受験者の負担軽減のために、事前にテーマを内示する企業もある。
②提出型試験
小論文テーマや字数制限などの記述要領を事前に内示し、受験者はこれに則って期日までに所定の論文を仕上げ、人事部などに提出するやり方である。
集合型試験で味わう緊張感に悩まされることもなく、論文案へのアドバイスを上司や先輩などの第三者から受ける時間もあり、受験者にとっては対策がしやすい。
ただし、この提出した論文については、その後の面接試験で記述内容を深堀されることが常で、自らきちんと考え整理した論文に仕上げておくことが重要である。
面接試験の対策については、以下の記事で解説している。
③ Web型試験
コロナ禍での在宅勤務の普及に伴い、各企業が一斉に採用した試験方式である。 試験要領は集合型試験と概ね同じだ。
集合型試験では受験者は実際にペンをとって記述するのに対し、Web型試験はキーボードによる記述である。
従って、試験時間は集合型試験より短縮化される傾向にあるようだ。
(2) 小論文試験の文字数は、1200字前後が多い
小論文試験の字数は800字から多くて3,000字程度の範囲で設定されるが、一般的に多いのは1200字~2000字程度というデータがある。
1200字というと原稿用紙3枚分
しっかりと構成を練り、テンプレートに沿って論文を作成すると、わりとあっという間に1200字は到達する。
(3) 小論文試験の頻出テーマ(2パターン)
小論文試験にあたり設定されるテーマは、企業理念に連鎖したテーマや、時事問題に掛け合わせたテーマ、多様である。
しかし、企業の昇進・昇格試験であるが故、奇をてらうテーマや受験者が記述に困惑するものはまずないと思っていい。
各社の論文テーマを概観し、テーマの傾向とこれによく使われているキーワードをまとめた。
(1)「現状の何を問題として捉え、これをどのように改善(変革)するのか」を問うテーマ
(2)「役職者としてなすべきこと」を問うテーマ
組織・資源・マネジメント・リーダーシップ・役割・目標・問題・課題・コミュニケーション・チームワーク・報連相・自職場 改善・生産性・業務効率化・コスト・残業 部下育成・教育・スキル・安全衛生 テレワーク・ワークライフバランス コンプライアンス・個人情報・ジェンダー・パワハラ・SDGs 等
日頃からこのテーマやキーワードを意識しながら業務にあたると、論文対策の一助になる。
頻出テーマの実際の出題例は、サンプル例文の項で解説する。
4. 昇格試験の小論文試験の書き方(コツ)
ここでは書き方のコツとなるポイントを4つ紹介する。
①構成を明確にする
序論、本論、結論の3部構成を意識し、論理的な流れを作ることが重要。各パートの役割を理解し、スムーズな展開を心がるといい。
②テーマを正確に理解する
問題文をよく読み、何が求められているかを把握する。テーマから逸脱しないよう、常に問題の本質を意識して書くことが大切。
③具体例を効果的に使用する
抽象的な議論だけでなく、具体的な事例や数字を用いることで、説得力が増す。ただし、例の選択は慎重に行い、テーマに適したものを選ぶべき。
④簡潔で明瞭な文章を心がける
長文や複雑な表現は避け、読み手が理解しやすい文章を心がける。一文一意を意識し、簡潔に自分の考えを伝えることが重要。
以上、4つのポイント。
もっと具体的な解説については、また別のレポートでまとめることとする。
5. 昇格試験の小論文試験の書き出し方
小論文の書き出しは、論文の方向づける意味で重要。この章では、小論文試験の書き出し方について解説する。
(1) 小論文試験の書き出しのポイント
書き出しのポイントは以下の通り。
- 会社の現状や課題を適切に認識していることを示す
- 自身の経験や考えを織り交ぜる
- 経営的視点や会社の方針を意識していることをアピールする
- 具体的かつ実行可能な提案につながる導入を行う
実際の試験では、与えられたテーマに応じてこれらの要素を適切に組み合わせ、自分の言葉で表現することが重要。
また、会社の状況や自身の立場に応じて内容を調整することも念頭に。
(2) 小論文試験の書き出しの例文:「4つの型」
テーマは「組織の生産性向上のための取り組み」とする。(製造業・営業職の試験問題より)
例1: 問題意識提示型
当社を取り巻く経営環境が厳しさを増す中、組織の生産性向上は避けて通れない課題となっています。本稿では、この課題に対する具体的な取り組みと、その実施に向けた私の考えを述べていきます。
例2: 自社の現状分析型
弊社の過去3年間の業績を見ると、売上高は微増しているものの、利益率は低下傾向にあります。この状況を打開し、持続的な成長を実現するためには、組織全体の生産性向上が不可欠です。以下、その方策について論じます。
例3: 自身の経験を活かした型
入社以来10年間、営業部門で経験を積む中で、組織の生産性向上には個々の社員の意識改革と、それを支える制度設計が重要だと実感してきました。本論では、この観点から具体的な施策を提案します。
例4: 経営理念との関連付け型
『顧客満足の追求と社会への貢献』という当社の経営理念を実現するためには、組織の生産性を飛躍的に高める必要があります。本稿では、この理念の実現と生産性向上の両立について、私見を述べさせていただきます。
2,3個、扱える型を準備しておけば、どのようなテーマが来ても対応できるだろう。
この考え方でもいいし、また別の書き出しの具体例は別記事で解説する。
6. 昇格試験の小論文試験のサンプル例文
この章では、昇格試験の小論文試験におけるサンプル例文(課題テーマと回答例)を解説する。重要なパートなので参考にして欲しい。
(1) 課題テーマ・設問
今回の解説では、以下の論文テーマが与えられたとする。
「当社の職場の問題点をひとつ挙げ、あなたが課長だったらどうするか述べよ」
※実際の問題は、字数1,200字以内
(メーカー・事務職の試験問題より)
(2) よくある回答例・サンプル例文(実際の回答より抜粋)
よくある回答例。評価されるかどうか、考えながら読んで欲しい。
問題のない組織や企業はない。組織や企業が人と人との集団で構成されている以上、そこには必ず問題が発生している。重要なことはその問題を放置せず、改善に結びつけることだと考える。
私の所属する職場でも同様である。この職場で最大の問題は、互いのコミュニケーションが良くないこと、さらに部門としてのまとまりがないこと、つまり上下左右の風通しの悪さではなかろうか。上司と部下あるいは同僚同士の意思疎通が悪いと、業務が円滑に進まないばかりか、職場全体がいつも暗い感じになり、これがお客様対応にも悪影響を及ぼしているように思えてならない。
私が課長になったら、まずこの職場の雰囲気を一掃したいと思っている。そのためには部下との職場会議の回数を増やし、挨拶の励行を徹底し職場を明るくしなければならない。そうすることでお客様への対応も活発化し、これまで以上の売り上げが期待できるはずである。
課長職は会社の要の役職である。課長になったらぜひこの職場の改革を実行したいと思う。(425字)
(3) よくある回答例・サンプル例文の解説
一見、良さそうな回答に見えるが、実は、上記のような回答だと評価されにくい。
ポイントを押さえればわかるし、逆に、合格できる回答もわりとさっくり書ける。
それについては、以下のガイドで解説している。
ここまで読んでいる方へ、無料で贈呈します。
7. まとめ
この記事では、昇格試験における小論文の書き方とサンプル例文の解説を行った。
評価される論文を書くことは、意外とハードルが高い。「論文」という特殊な文章を普段書く機会が少なく、慣れていないからだ。
ポイントさえ押さえれば、合格の確率は飛躍的に上がる。
ぜひこの記事を参考に準備して、いい結果を出せることを祈っている。